自ら「死」を選択できる時代に
「ALS患者嘱託殺人事件」
今回は一個人として、医療崩壊があり得るコロナ時代において"安楽死・尊厳死"について思うことを話してみたいと思います。ブログでも触れた連載記事「安楽死と呼ぶ前に」の議論テーマになったALS患者の嘱託殺人事件ですが、その依頼患者は建築士のキャリアウーマンだったようです。そんな方だからこそ無力な状態に絶望されたのか、"自分はなんの生産性も無く、税金を食い潰しているだけの人間だから死にたい、死んで自分の生存に関わるコストを最低限にするという社会貢献がしたい"などと考え、安楽死を求められたようです。
もし彼女と同じ立場であれば、私も同じような考えに至っていたと思います。ALS患者であったスティーブン・ホーキング博士のように社会貢献をされる方はごくわずかで、博士自身も病状が悪化して生産的な生活を送れないと感じたら、医師のほう助による自殺を考えたと生前に語っていたのです。
彼女のように周囲や社会にこれ以上負担をかけたくないと死を選ぶ人もいれば、かたや会社のお金を横領をし、競馬などですって電車に飛び込んで多大な迷惑と損害を与えて自殺する人もいる。。宗教によっては自殺は罪であり、地獄行きといわれることもありますが、この両者の自殺は全く別物であると私は信じたいと思います。
コロナ禍では精神疾患などのメンタル面の悪化も・・
個人的には重度の認知症や植物状態のような意識のない重い病状の場合は安楽死・尊厳死の容認があってもいいのではとかねてから思っていましたが、ALSのような意識がある重い病身でも患者自身が望む場合は、コロナ禍の医療負担を考えると検討の余地があるように感じますね。またコロナ禍では仕事を失ってアルコール依存や家庭内のDVが深刻になったり、家族の認知症などの介護に疲弊して心中を図るなど、通常の時代であれば乗り越えられることもそうはいかなくなって自殺や殺人といった事件に発展する恐れがあります。。そういったメンタル面のアルコール依存や鬱などの精神疾患が悪化する場合も自殺ほう助を認めている国があります。
世界初の安楽死公認のオランダの制度
今年、安楽死の合法化が認められて施行予定の国はスペインとニュージーランドですが、世界で初めて安楽死が公認されたのはオランダでその条件とは、"患者本人による完全に自発的な要求であること、患者が改善の見通しがない耐えがたい苦しみに襲われており、安楽死以外の解決策が存在しないこと、安楽死の担当医以外の医師が本人を診察し、安楽死の是非について意見すること(セカンドオピニオン)"などで要件を満たせば、安楽死を選ぶことができます。実際に安楽死をされた人は、自分で選んでようやく死ねるという喜びがあって後悔している様子もなく、"幸福な死"が見受けられたようです。
日本でもそのようなシステムがあれば、前述のALS患者のような事件や老々介護の無理心中などもなく、穏やかな死を迎えられたのではと不憫に思われ、"自ら選択する「死」は決して絶望ではなく、心の救済の希望でもある"と私には感じるのです。日本は世界一の長寿国で医療制度も充実しているからこそ、こういったひずみある根深い問題と向き合わなければならないと痛感します。
連載記事「安楽死と呼ぶ前に」のコメントには、"安楽死の議論を積極的にすべき、そういった選択肢をタブーにしてはいけない"など、容認がほとんどで共感できる内容が多数ありました。そういった一人一人の"声"にちゃんと耳を傾けなければならない時代が訪れていると個人として強く感じております。
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